「……かわいすぎ」

「え?」

「てか昨日ごめん、本当はあんなことするつもりじゃなかったんだけど……」


 謝らないって言ってたのにやっぱり謝っちゃうところが蓮樹らしいな。


「みらいがあまりにも意識してくれないから、つい」

「意識してないわけではなかったよ」

「嘘だろ!」

「んー、なんていうか、距離が近くなりすぎてわかんなくなっちゃって。蓮樹がどう思ってるのかもわからなかったから」

「俺結構わかりやすくしてたと思うんだけど」

「全然わからなかった。ごめんね」

「はあ……」


 どうやら私は鈍感ってやつらしい。
 きょんちゃんにもそんなようなこと言われたことある。

 蓮樹はすっごく溜息をついてから、私の体を少し離して私の頬に触れる。


「キスしていい?」

「改めて言われるとドキドキするね」

「もういい、する」


 事故みたいなファーストキスと突然奪われたセカンドキス。
 三度目のキスは彼氏と彼女になってから。

 甘くてドキドキして何だかふわふわして、心の奥からじんわりと温かくなっていく。
 やっぱり大好きだなって、再認識する。


「好きだよ、みらい」

「私も。昨日もびっくりしたけど、嫌じゃなかったよ。好きな人だから」

「……ずるすぎね?」


 こつん、とおでこがくっついたと思ったら視線が絡み合って、また唇が重なり合う。
 ここは学校だということを忘れてしまうくらい、しばらく二人の世界に浸っていた。

 蓮樹のことは大好きだった。
 でも何となく、幼馴染のままでも蓮樹と一緒にいられるならいいかなって思ってた。

 だけど変わることを望んでもいいのかなって、あの時思った。

 キスから始まる音が聞こえた。



fin.