こんな見た目じゃ誰も自分のことを好きになってくれない。
そう気がついた日だった。

それから幸は自分からは目立たないように一歩後ろを歩いて生きてきた。
そんな幸の言葉など、誰も聞かないし、誰も気にしていない。

一方の朋香と和美は宣伝部の中の花と呼ばれる二人組で、スタイルもよくて顔も可愛い。
同じ人間だとは思えないその容姿に幸は嫉妬すら感じたことがなかった。

「佐藤さんのあのメガネ、どこで売ってるんだろうね」
「わかる! ダサすぎ!」

朝から部長の説教を受けた幸が自分の席へ戻ってきたときも、ふたりはそう言ってクスクス笑いあっていた。

近所の激安眼鏡店で購入したメガネはレンズが分厚く、今にも鼻からずり落ちてしまいそうだった。
レンズの加工代をけちったためにフレームからも随分はみ出してしまっている。

顔も、もちろん重たい。
それでも幸はなにも聞こえなかったふりをしてようやく自分のデスクへたどり着いた。

今やっている仕事は自社製品の広告作りだ。