幸はふたりに声をかけて教室へ入るつもりだったけれど『まじで？　佐藤とか無理だって！』と言うB男男の声が聞こえてきて入り口前で足をとめた。

幸い、まだドアを開いてはいなかったから、そのまま聞き耳を立てる形になってしまった。

『だよね、よかったぁ』
なぜかA子のホッとしたような声。

『だってあいつ、デブじゃん。目とかゴマみたいだし』
そう言って大きな声で笑うB男の声を聞いて全身から汗が吹き出した。

なんだかわからないけれど、恥ずかしさを感じて一歩後ずさりをする。
自分が他の子よりも太っているということは自覚していた。

でも目がゴマってどういうことだろう。
そんなに小さい？

自覚していない欠点を指摘されてうろたえる。
結局、幸は忘れ物と取ることなくそのまま逃げ帰ってしまった。

そして鏡で自分の顔をまじまじと確認したのだ。

大きな顔。
小さな目。
団子っ鼻に、沢山の吹き出物……。