けれど朋香がそれを許さなかった。
グイッと腕をひかれて引き止められたとき、幸はようやく愛想笑いを浮かべる。

「佐藤さぁん。後輩を無視するとかないんじゃないですかぁ?」
朋香の甘い香水の匂いには毎回辟易とさせられる。

幸は思わず鼻をつまんで朋香と向き合った。
その瞬間朋香が泣き出してしまいそうな顔になり「なんですかその顔。ひっどーい!」と、騒ぎ出した。

朋香の悲鳴に近い声に部長が慌てて駆け寄ってくる。
「どうかしたのかい?」

えーんと泣き出してしまった朋香と見て部長は明らかにうろたえているけれど、幸はそのまま自分の席へと向かう。

面倒事はごめんだ。
だけど誰も幸のことをほっといてはくれない。