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「おはようございまぁす」
オフィルビルが立ち並ぶ一角。

周りの高いビルのおかげで存在感を失って日陰のオフィスとなっている3階建てのビルへと入っていく。

そこに受付嬢などおらず、来客は自分の用事のある階の地図を確認して自分でそこまで行くことになっている。

幸が働いているのはこの橘オフィスの3階。
宣伝部と呼ばれる場所だった。

一応自社製品を作って販売などをしている橘オフィスの重要部署のひとつではある。
「あ、きたきたぁ。佐藤さん。ちょっと遅いんじゃない?」

幸がオフィスに入ってきたと同時に笑みを浮かべて近づいてきたのは藤本和美と池辺朋香の二人組だ。
ふたりは幸より3つ年下の25歳。

後輩にあたるわけだけれど、まるで幸のことを慕っている様子はない。
自分の席へ向かいながら幸は和美の声に気が付かないふりをして通り過ぎようとする。