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「佐藤先輩トイレ長くないですかぁ?」
部署に戻ると朋香が開口一番にそう言ってきた。

いつもなら無視するのにギクリとして足が止まる。
その様子を見て和美が笑い出した。

「やっぱり佐藤先輩だったんですねぇ?」

ふたりとも、幸が個室に入っているとわかっていてわざとのんびり化粧直ししていたのだ。

幸はなにも言わずに自分の席へと向かう。
「お腹壊してるんですかぁ?」

「あ、掃除はちゃんとしておいてくださいねぇ?」
ふたりの言葉に周りの社員たちが笑い出す。

誰も自分の言葉なんて聞いてくれない。
なにを言っても、容姿のいい人間の声によってかき消される。

幸は身を小さくして、仕事を再開したのだった。