「わかる! でもこの会社って全体的にレベル低いから、別に中川さんじゃなくてもよくない?」

中川の名前が出た瞬間幸の心臓がドクンッと跳ねた。
人事部にいる中川は今年で30歳になるはずだ。

長身でスーツがよく似合っていて、女受けのする顔をしている。
間違いなく、この会社の中では一番ルックスがいい男性社員だった。

だけどふたりからすればまだまだレベルが低い方なんだろう。
それよりも早く出て行ってくれないかな。

メーク直しに時間がかかっているようでいつまでもトイレから出ていこうとしないふたりにじれてくる。

そのときだった。
一番恐れていたことが起こった。

「ってかさ、ここのトイレ長くない?」
朋香がそう言い出したのだ。

トイレには今幸とふたりしかいないから、間違いなく幸のことを言っている。
まずい!