そのくらいのこと、嫌というほど考えてきたのだから。
大学を卒業してすぐに入社したこの文具会社の仕事を幸は気に入っている。

文具は元々好きだし、そこに携わる仕事をしたいと思っていた念願がかなって入社しているのだから。

でも、でも。
あいつらが入社してから社内の雰囲気がガラッと変わってしまった。

今までは花になるような社員がいなかったから、みんな仲良くやっていたのだと理解した。

ひとたび華やかな社員が入ってくれば、みんなが彼女たちの言いなりになる。
彼女たちはそれを利用し、見た目の悪い人間にミスをなすりつけ、上司に媚をうる。

こんなはずじゃなかったのに……。

また拳を握り直したとき、近づいてくるふたりの声が聞こえてきて幸は咄嗟に個室へ飛び込んだ。

案の定、トイレに入ってきたのは朋香と和美のふたりだ。
ふたりはトイレを使うのではなく、化粧直しにきたみたいだ。

「人事部の中川さん。やっぱりいいよね?」