佐藤幸の日常は毎朝6時から始まる。
枕元に置いたスマホのアラームが鳴り響き、幸は頭まで布団にかぶってうるさそうに顔をしかめる。

それでも鳴り止まないアラームにしぶしぶ布団から顔をだしてスマホを睨みつけ、乱暴にアラームを止める。
それからブスッとした顔のままボリボリとお腹をかきながら洗面所へ向かい、鏡に映った自分の顔を見て盛大なため息を吐き出す。

幸は日頃から朝起きた起きたときに自分の姿かたちが絶世の美女へと、それこそだれも文句をつけようのないほどの美女へと変わっていないだろうかと考えて眠るのだけれど、それが現実になったことは1度もない。

それから狭いキッチンで窮屈そうに体を横にしたり縦にしたりを繰り返してトーストとコーヒーの準備をする。
少し苦いコーヒーを口に含んだあたりで、幸はようやく目を覚ます。

そしてあっという間にトーストを平らげるのだ。
「あ~あ、今日も仕事か」

と、まるで人生の終わりのように盛大なため息をつくことだって忘れない。

ダラダラと億劫そうに着替えをしてアパートの部屋を出るのは朝7時過ぎ。
これが、いつもの佐藤幸の日常だった。