"陽side"

「お前さ、いつになったら俺のこと頼ってくれんの?」

「頼るってなんなのよ」

今思えば夏都はあまり人に頼らない。
正確には頼れないのだろう。
頼り方が分からないのか頼りたくないのかは分からない。

「じゃあ明日晴れにしてよ」

「俺のこと魔法使いかなんかだと思ってる?」

「魔法使いにもなれなかった落ちこぼれだとは思ってる」

「まじクソ」

こんなやり取りしかしてない俺たちがこの先付き合えることがあるのか?と最近思い始めた。

周りから見ても俺が夏都のことがすきとは多分思わないだろう。

こんなやり取りをしている間にも時間は過ぎていくものでもう夕方の18時
そろそろ夏都の母さんが帰ってくる時間だ

「ただいまー」

「おかえりなさい、美鈴さん」

「あっ陽くん今日ありがとうね……夏都……雨大丈夫だったかしら」

「やっぱり今日も意識失いました。保健室に運んで学校終わった夕方に目覚ましました」

「そう……いつもごめんね陽くん」

「いえ、俺には夏都のそばにいることしかできないんで」

玄関先で夏都の報告をするのが日課だ

夏都の母さんもずっとずっと夏都のことを心配している。夏都は母さんには雨嫌いなことバレてないと思っているが毎回気絶するんだからバレて当然だ。

昔の夏都は雨の音も雫も水溜まりも匂いも全部……全力で楽しむ元気な女の子だった。

傘に落ちてくる雨の音で感動するような子供で水溜まりでちゃぷちゃぷしながらまるで音楽を奏でてるかのようにるんるんしてるような子供で匂いを嗅いでは俺に"陽くん!雨さん喜んでる匂いする!"とポエマーのような事を言ってくるそんな子供だった。

あの頃の夏都は私は雨の日がいっちばん大好きなんだと笑顔で話していたくらいだ。

あの頃の笑顔にしてやりたい。いっちばんすきだった雨の日がまたすきになるようにしてやりたい。その一心で頑張ってきた幼少期。

高3になった今、何も変わってなくて心底自分に腹が立つ。