雨の日は陽がヘッドホンを持ってくる。
雨の音をシャットアウトして目を瞑って
陽がわたしをおぶって帰る。

「まるで幼稚園児みたい」

わたしはぼそっと言った

「お前は幼稚園児じゃなくて俺の飼い犬」

そんなことを陽が言っていたことなんて知る由もない

家に着くと陽はまるでこの家の住人かのようにキッチンに立ち温かいミルクティーを用意する

「砂糖3杯」

「もう入れた」

「ありがとう」

「ありがとうございます、陽様だろ」

「あんたに、様なんて死んでも言わない」

「じゃあもう入れない」

「あっそじゃあもう勉強教えない。赤点乙です」

「あっそ」

陽はきっとやれば出来るのにやらないが故にテストの点数はいつも壊滅的だ。
わざとなのかガチの方なのかは分からないが信じられない点数を毎回たたき出している。

「この問題教えろ」

「……」

「シカトするのか?」

「……」

「俺の方見ろよ……」

そう陽は言いながら私の顎をクイッと持ち上げて
顔を横にした

「な、なにするのよ。離してよ」

「こうしなきゃ俺の方見れない悪い子だもんな」

「あ、あのさ前から思ってたけど生まれた時間1分早いくらいで偉そうにしないでよ」

「は?生まれた時間どーのこーのは別にどーでもいい。お前は俺の飼い犬で俺はお前の飼い主」

「なによそれ、意味わかんない」

ついにこいつ頭いかれたか?
何言ってんのこいつ。わたしが飼い犬?こいつが飼い主?意味わかんない。

「お前が苦しくないように飼い主として守ってやる。その代わりお前は飼い犬として俺の言うことを聞け」

「どうせ奴隷みたいにしたいだけでしょ」

「奴隷?飼い犬にそんなことするかよ。たっぷり可愛がるだけだよ」

「はいはい。そーですかそーですか」

こいつの遊びには適当に返事しとくだけで十分だ。