「なにがおかしいんです」
「いや、なんだろうなこの気持ちは……。愉快というか、お前と話していると……気分がいい」
「そ……それも、普通です。皆で昨日食事を作ったみたいに助け合って働いて、上手くいったりいかなかったりそんなことを身近な人と話して笑ったり、怒ったり、悩んだりして……」
「そうか……。俺も、そうだったらな――」

 そこまで言って彼は首を振り、遠くを見た。

「これから城へ戻ろうという時に……。どうにもならんことだな、こればっかりは」

 せっかく外での楽しみを知ったのに、彼はこれから、母親のために城に帰るのだ。
 メルの口からはなんと言ってあげればいいのか、上手な慰めも出てこない。シーベルと話す時のように、自然体を晒せる人物は彼の側では稀なのだろう。仮にメルだって、事前にラルドリスが王子だと知っていたら、今の様に話せたかどうか。
 それでも……。

「探せば……きっといますよ、お城にも、あなたの気持ちを汲んでくれる人が」
「あんなところにか?」