メルの醸し出した有無を言わさぬ剣幕に、さすがのラルドリスもたじろぐ。
 そこにメルは、しっかりと今後の要求を突き付けてやった。

「二度と、許可なく、女人の寝床に入って来たりなさいませんよう。次同じことをすれば……いくらあなた様とて、正当防衛させていただきます。魔女の力で」
「ま、魔女の力で……何をする?」

 いやに協調された魔女という部分にラルドリスはごくりと喉を鳴らし、メルは静かに口角を吊り上げた。

「痛いのとつらいのと苦しいの、どれがいいか。そのくらいは選ばせてあげますけど?」
「……わ、わかった。もうしない。この通りだ」

 メルの不気味な笑顔が効いたのか、ラルドリスはようやく自分の非を認めうなだれた。
 そこへ扉が開き、戻ってきたシーベルが顔を出す。

「おや、痴話喧嘩は終わりましたかね」
「……シーベル様?」

 いつも通りの朗らかな口調で声を掛けてきた彼は、笑顔のまま送られたメルの視線になにかを感じたのか、両手を小さく上げた。