「えっ、ちょっと……大丈夫ですか!?」

 とうとう耐え切れなくなったか、ラルドリスの身体がぐらりとかしいでくる。
 それはバランスを崩すと、そのままずるずると膝の上に着地した。

「ちょっとーっ?」

 彼はメルの抗議も聞かず、そのまますうすうと寝息を立て始める。
 表情は緩み、少しいつもよりあどけない、可愛らしい素顔が覗いている。

「ねえぇ、困るんですけど……」

 おずおずと彼の体を揺さぶってみるが、起きる気配はまったくない。
 もうすぐ、この屋敷の主と対面するというのに……この様子では、なにも把握していないメルが事情の説明をしなければならないではないか。

 そしてこういう時はとことん間が悪いもの。
 かちゃりとドアが開き、ひとりの人物が顔を見せる。

「よくお戻りになられました、我が主よ……! 手傷を負われたと報告がありましたが、お加減は……」