明らかに馬鹿にした口調で、ザハールはラルドリスを嘲った。
 仮にラルドリスがザハールによる襲撃を主張しても、罪を認めさせることは出来ないという自信の表れか。

「あながち間違いでもないさ。襲撃は受けたからな。どうやらこの国を牛耳ろうという不埒な輩が、大手を振って城に居座っているらしいぞ。誰とは言わぬが」
「……ふん。影薄の愚弟風情がよく囀るわ。痛い目に遭いたくなければ、今からでも踵を返し、辺境に引きこもっておれ!」
「悪いが、あんたに構っている暇はない。父上に挨拶させてもらう」

 ザハールの大声での恫喝に、ラルドリスはまっすぐに視線を戦わせたが、彼には取り合わず、その隣をすり抜けようとする。

「おい、誰が通行を許した!」
「ザハール王子、他ならぬ陛下が兄弟おふたりを同列と認めておるのです。これ以上はお控えくだされ」

 ラルドリスの肩に向かって伸ばされたザハールの腕を、ボルドフが止めた。忌々しい舌打ちが第一王子の口から漏れる。

「ふざけおって……見ていろよ。貴様らの顔、すべて覚えておくぞ。私が王座に就いた暁にはどうなるか、今から楽しみにしておくがいいわ」