病に臥した国王の居室は城の三階にあるらしい。
 建物の門に続く道を堂々と歩く中、あるところで一行は足を止める。通路の真ん中に、完全にこちらの通行を妨げる意図で誰かが立っていた。
 近付くと銀の髪の青年が腕を組み、その青い目で見下すようにこちらを見ている。彼に睨まれそのまま通り過ぎることもできず、ボルドフが跪いた。

「ザハール王子、ご無沙汰しております」
「ふん、俺を毛嫌いして呼び出しにも応じなかったお前が、どういう風の吹き回しでその愚弟を連れて来たのだかな。次期後継者としての権利を持ちながら、のこのこと城から逃げ出しおったそやつを」
「そのような言い方――」
「ボルドフ、下がってくれ」

 ラルドリスがボルドフを庇うように進み出ると、ザハールと数カ月ぶりに相対した。

「久しぶりだな、兄上」
「はっ、こそこそと俺から逃げ回っていたあのお前が、ずいぶんと堂々目を合わすようになったではないか。まさか、死に目にあって自信でも付けたなどというまい? ははははは!」