「でも、こういうことは特別な間柄の男女がやるものですし」

 ちらちらとその顔を横目で確認しようとするメルに、ラルドリスは気負わず告げた。

「何を言う。俺からすれば、お前は十分に特別な存在だぞ?」
「ひぅっ……!?」

 ――特別な存在。
 そんな言葉に、メルはついには、頭から湯気が出そうほど赤くなった。しかし、ラルドリスの表情は胡乱で、彼の「特別」の意味は、想像とは大きくかけはなれているようだ。

「どうした、変な顔をして? それは特別だろう。なんせ、俺に面と向かって文句を言えるような女、これまで見かけたことがないんだからな! 互いに至らぬところを言い合えるのはよき友人たる証という。つまり、お前は俺の初めての友だといえる! 光栄に思うがいい!」
(はは……この王子様ったら……)

 ふんぞり返るラルドリスに、メルは頭が痛くなった。いつ彼が、メルの至らぬところを指摘してくれたというのだ……。