ラルドリスの冗談めいた口調にその光景を想像してメルは少しだけ笑ってしまった。彼に睨まれたので慌てて口元を隠すと、通りを流れる人の波に混ざろうとする。

「かしこまりました。では行きましょう」
「ちょっと待った」

 そこでラルドリスが、メルの腕を掴んだ。
 そしてグイッと引っ張ると、自分の腕に添えさせる。
 メルは思わずきょとんとしてしまう。

「あの……なにを?」
「通行人を真似ただけだ。お前とはぐれたら、俺が困るからな。不味いことでもあるか?」
「ま、不味いということは……」

 ない……ような、あるような。
 じんわりと、自分の顔に血が上っていくのを感じつつ、メルはどうしようか迷った。確かに、この人混みに流され別々に別れてしまえば、大いに困る。それもどちらかというと、お守を任されたメルの方が……だ。