「彰、おはよう」

うしろから僕の肩を握り挨拶をしてきたのは飯田くんだった。

今の見られた?

「おはよう」

「今日はえらい機嫌がいいな」

「何で?」

「ガッツポーズしてたじゃん」

見られてた。

さすが飯田くん。

「別に機嫌が良いとかじゃないけど…」

「ん?彰、櫻井さんが来たけど」

「そう…」

さっきまでメールをしていた櫻井さんが来たのが嬉しかったけど、それを悟られないように、素っ気なくそう言った。

「櫻井さん、おはよう」

「おっ…お…は……よ…う」

「櫻井さんも、何か機嫌が良さそうだね。歩く感じがいつもよりリズミカルだった」

「そっ…そ…」

「櫻井さん、気にしないで。飯田くんは困らせようとして言ったんじゃないから」

顔を赤くして困っているのを見ていたら無性に助けたくなった。

「ごめん、櫻井さん。そういんじゃないから」

「うっ…う…ん…」

「でも2人して機嫌が良いなんて、お二人さん何かあった?」

「あっ…ある訳ないじゃないか!ねえ、櫻井さん?」

僕が問いかけると櫻井さんは首を小さく傾げて微笑んだ。

「飯田くん、この話はこの辺で」

否定しない櫻井さんの反応に慌ててそう言った。

「何だ、つまんないの」

そう言い残すと、飯田くんは自分の席に戻って行った。

ふと、隣の席の櫻井さんに目を向けると、こちらを見ている彼女と目が合った。

すると彼女は恥ずかしそうに目を背け俯いてしまった。

まだ、朝のホームルームが始まるまで少しばかり時間が合ったので、机の物入れ部分に隠れて彼女にメールを送った。

【今日も1日頑張りましょう!】

【はい】

メールが返ってきたので彼女を見ると、頬を赤らめて口角が少しばかり上がっているのがわかった。

ちょっとばかり嬉しそうに僕には見えた。