「彰、何ニヤついてるん?」

「なっ‥何でもないよ。さぁ、行こう」

彼女を見たら一瞬だけ目が合った。

彼女は首を小さくかたむけ微笑んだ。

ドキッとした。

何て素敵な笑顔を見せるんだろう。

何てキラキラ輝いているんだろう。

何で他の人は彼女の魅力に気付かないんだろう。

何で彼女を知ろうとしないのだろう。

彼女は他のどんな女子よりも普通の女の子。

女の子らしい女の子。

いつも見ていたからそのことに気付けることが出来た。

彼女は今流行りのキャラクターのぬいぐるみのキーホルダーを鞄につけている。

筆箱はディズニーの柄の物で、シャープペンもディズニーの物を使っている。

彼女はディズニーが好きだった。

携帯電話は折りたたみ式の物で、僕の知らないキャラクターの携帯ストラップをつけていた。

お弁当はいつも手作りの物を持ってきていた。

お弁当を見る限り、料理好きで料理が得意な母親がいるのはわかった。

また、彼女は基本休み時間は1人で過ごしているのだけど、大抵は読書をしているかスマホで音楽を聴いていた。

小説は、結構話題のものを読んでいることが多かった。

本屋が選んだ小説大賞の本や、直木賞などの受賞作品、映画実写化された原作の小説を読んでいた。

つまり流行りものが意外にも好きだった。

僕も家ではよく小説を読んでいるので、小説の話題でお喋りをしたり、オススメの本を互いに貸し借り出来たらいいと思っていた。

音楽はK-POPをよく聴いていた。

日本の音楽というよりかはK-POPとか洋楽を聴いている方が多かった。

好きなK-POPの歌手がいるようで、いつも聴いていた。

だから僕も調べて聴くようになった。

好きな人がいつも聴いている曲を聴いている。

それだけで胸が高鳴った。

僕のさり気ない視線に気付いた彼女とよく目が合った。

「そのディズニーの筆箱かわいいね?」

何だか気まずくなって言った一言だった。

彼女は一瞬戸惑ったあと、何も言わず頷いて微笑んできた。

こういうことは時々あって、その度に僕は彼女に他愛もないことを言ってその場を切り抜けた。

切り抜けた?かどうかはわからないけど、いつも彼女を見ていることに気付いていはいないようだった。