「ここであれこれ言っても始まらないから、白川に直接聞いてきてやるよ」

「詩美ちゃん、私も行く」

「私もいっ‥」

「香澄は来なくていい。お前が来たら教えてもらえなくなるかもしれないからな」

教室を出て行こうとする2人について行こうとしたら詩美に制止されてしまった。

「香澄ちゃん、安心して。事情を聞いたら、必ず香澄ちゃんにも伝えるから」

舞香は私の手を両手でガッチリ握ってそう言った。

そして2人は教室を出て行き、私は1人教室に残された。

何か大変なことになっちゃった。

よくよく考えてみたら、三枝先輩が私を好きでいてくれたことは嬉しいけど、私はその気持に応えることは出来ない訳で、そんな三枝先輩と白川奈未がキスをしていたところで一切ジェラシーは感じない。

感じないけど、何ゆえに私の目の前でそんな行為に至ったのか疑問に思っただけで答えを知りたいなどとは考えていなかった。

こんな言い方をしたら語弊があるかもしれないけど、私のこととなると詩美と舞香は私以上に熱くなって止められなくなってしまう。

私を想ってのことなんだけど、私の知らないところで話が進んでいくのは困る。

それから10分ぐらいして2人は戻って来た。

2人の顔色が幾分冴えないのは直ぐにわかった。

というより、むしろ青ざめていた。

「おかえり。白川奈未に聞けたの?」

「うん、聞けたよ」

「で、どうだった?」

「うっ‥うん」

舞香はうつむき、私と目を合わそうとはしなかった。

「何でもなかった」

「何でもなかったってどういうこと?」

「何でもないは何でもないんだ」

詩美は怒ったようにそう言ったけど、こういう時の詩美は絶対に何かを隠しているのはわかってる。

「言ってる意味わかんない。わかるように説明して」

「意味なんてないんだよ」

「香澄ちゃん、あのね…」

「何?舞香、何か言いたいことがあるんだよね?」

「さえぐっ‥」

「舞香っ!」

詩美は大声で舞香を怒鳴りつけた。

舞香が何かを言おうとしたのに、何で止めるの?