「何だそれ?手紙か?」

「そうみたいです…」

「一体誰がそんなものを?」

「たぶんこのクマの持ち主だと思います」

「結菜ちゃんか?」

「はい…」

武田さん…だけじゃなく僕の周りの人たちはこのクマの本当の持ち主である結菜のことを知っていた。

なぜなら、高校サッカーの試合には必ずベンチにはこのクマがいてちょっとした話題になり、ニュースのスポーツコーナーでF高校が取り上げられたことがあったからだ。

そこでクマの持ち主である結菜のことも紹介された。

生前のマネージャー姿の結菜の映像がテレビで流れ、結菜の死を悲しむ声がテレビ局に殺到したと聞いている。

プロになってからも、僕のチームのベンチにはクマがいる。

だから僕は試合には絶対に負けられない。

「手紙、読まないのか?」

手紙を持ったまま考え事をしている僕を見て、不思議に思ったのか武田さんが声をかけてきた。

「いえ、読みます」