「彼とはF高校に入学して初めて話しをしたわ。確かに彼は使命としてあなたに近づき友達になった。でも、それはあくまで監視役としてあなたの姿を映像として収めるのが目的だった。親友になっていつも一緒に行動してお泊り会をして色んなところで遊び回って泊まりで旅行に行くなんてことは、こちらとしても想定外のことだった。彼は誰かに言われたからではなく、なりたくて自らあなたと親友になった」

「月は人一倍責任感が強いから使命感からそうさせてしまったんだ」

「だったら彼がF高校に入った理由は何かしら?あなたと一緒にいたいから。あなたと全国大会の決勝に行きたいからでしょ。それにね、彼の使命は小学3年から中学までの間。高校生になった時点で彼の任務は完了しているの。つまり彼があなたと親友でい続けているのは彼が選んだ人生なの」

「月は幸せだったのかな?僕と結菜と一緒にいて後悔してないかな?」

「私も同じ質問を彼にしたわ。彼の答えを聞いて涙が流れたわ。だって彼は『幸せに決まってるやろ。逆にあいつらがおれへんかったら、おもんない青春時代を送っとったで』そんな風に言うんですもの」

「あいつがそんなことを…うぅぅぅぅぅぅ……」

僕が地面で泣き崩れていると、うしろから奈未ちゃんが包み込むように抱きしめてくれた。

とてもあったかくて優しくて、余計に涙が止まらなくなった。