また、1つだけ心配なことがあった。

F高校1年で同級生となった奈未ちゃんと香澄のことだ。

奈未ちゃんにとっては香澄は因縁の相手。

香澄は記憶をなくしているから奈未ちゃんのことは憶えていない。

それに香澄が奈未ちゃんにあんなことをしたのは僕が原因だった訳で、僕の記憶すらない香澄が奈未ちゃんに危害を加えることはないし、むしろ何の接点もない訳だから話すこと自体ないと思う。

2人が交じあわなければいいと切に願う。

通常の学校生活がスタートしたけど、奈未ちゃんとは学校内でよく会うようになった。

時々、2年のフロアがある2階にやって来ては僕のいる4組にやって来た。

放課後もサッカー部の練習を度々見ている奈未ちゃんの姿を目撃することがあった。

明らかに僕に会いに来ているのはわかる。

僕が目当てなのはわかるし、会いに来てくれるのは嬉しい。

僕に好意を抱いてくれているのかと勘違いしてしまうくらい奈未ちゃんは僕に会いに来てくれた。

でも、話しかけるといつもの調子で返ってくる。

まるで僕に興味などないような話し方をしてくる。

そんな感じなのに、部活終わりに食事やドライブに時々誘われた。

結菜への想いが僕の中にあったので気が進まなかったけど、結局は断りきれずに負い目を感じながら行ってしまう僕がいた。

それにしても、奈未ちゃんと一緒にいると不思議な感覚になる。

一緒にいるだけなのに何か落ち着く。

話しをしていなくても全然苦にならない人だった。

むしろ会話のない空間が会話をしているようで居心地が良かった。


また、恐れていたことも起こり始めていた。