「でも、心配しないで。人は時間が経つにつれて悲しみは小さくなっていくものだから。少しずつ前を向いて歩けるようになるものだから。でもそれは、薄情とか冷たいとか、そういうことじゃないの。人は悲しみを抱えていたままでは生きていけないから、脳が自己防衛のために悲しみを小さくしていくの」

「そして何年何十年も経てば、私を忘れて行くの。その方がいいの。あなたにはあなたの輝かしい未来が待っているから。幸せで楽しい人生がやって来るから」

「だから今直ぐに立ち直って元気になってとは言わない。少しずつでもいいから元の快斗に戻ってくれればいい。なんてね。その原因を作っているのが私なのに偉そうなことを言ってゴメンね。本当にごめんなさい」

「でも、私は信じてる。あなたの強さを。そして優しさを」

「私は死んじゃうから…一緒にいられなくなっちゃうから…約束して欲しいの。サッカーは続けて。そして私を全国大会の決勝に連れて行って優勝して」

「今のままでは準優勝も難しいと思う。来月にある東京大会でもベスト3がいいとこだと思う。あなたのサッカー部は優勝する実力を持っている。持っているのに優勝できないのは何でだと思う?それは…私の口からではなくて、月から聞いた方がいいと思うから私は言わない。それが克服できたなら優勝は夢じゃないわ」

「絶対に私を全国大会の決勝に連れて行って優勝して」

「じゃあ、長くなっちゃたけど、これで終わりにします。快斗、じゃあね、バイバイ」

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結菜は画面に笑顔で手を振っていた。

途中、涙で画面が見えなくなっていた。

余りにも悲しすぎて見ていられなかった。

あの日から止まっていた涙が次から次へと溢れ出して今度は止められなくなった。