「それなら…あなたに見せたいものがあるの」

「見せたいもの?何ですか?」

「結菜があなたに残したメッセージよ。本当は見せるかどうか迷ったの。でも、あなたの気持ちを聞いて決心したわ。だから見てあげてちょうだい」

七海さんは僕にスマホを手渡してきた。

そこにはベッドの上の結菜が映し出されていた。

髪は生え揃っていて、頬もまだふっくらしていた。

「これはいつ撮ったものですか?」

「結菜が倒れて入院して数日経った頃だった。結菜が万が一の時に備えて、快斗くんにメッセージを残しておきたいと言って、私が撮影したの。結菜は自分の病気も知っていたし、覚悟もしていたの」

「あの時から結菜は…」

結菜は病気のことは知らないと思っていた。

両親も伝えないと言っていたし、誰も教えることはないはずなのに…。

「結菜が自分で病院の医師に聞いたの。飲んでる薬や点滴をネットで調べて何となくわかっていたんだと思うの」

「そうとは知らずに僕は…」

「仕方なかったの。あの子が決めたことだから」


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「快斗、この動画を見ているということは、私はもうこの世にはいないということなのね」

「あなたのことだからヒドく落ち込んでしまっているかもしれないわね」

「学校にも部活にも行かなくなってしまっているかも」

「考えただけで心配です」

「なんて言ったら、あなたを立ち直らせてあげられるか考えたわ。どんな言葉をかけてあげたら、あなたが元気になれるか考えた。でも、結局は何も思い浮かばなかった」