「なみちゃん、何して遊ぶ?」

「は?」

なみちゃん?

何て馴れ馴れしいのかしら?

でもこれが庶民というものなのかしら?

だとするならば、そう呼ばせてあげてもよろしくってよ。

「何して遊ぼうか?」

彼がそう聞いてきたけど、公園で遊んだことなんて殆んどないから何をしてよいかわからない。

「何が面白いのかしら?」

「そうだな、ブランコが空いてるからブランコに乗ろう」

「いいわよ」

彼はブランコに向かって歩き始めると妹も金魚のフンみたいについて行った。

「なみちゃんとスーちゃんが乗って」

ブランコは2つしかなく、彼は私と妹に譲ってくれた。

妹はブランコに腰掛けると勢いよく漕ぎ始めた。

意外に簡単そうね。

私もブランコに腰掛けると妹がやっているように足を伸ばしたし縮めたりを繰り返した。

あれ…おかしいな。

妹のように勢いが全然つかない。

「ちょっとこれ、どういうこと?全然漕げないじゃない!」

頭にきて、ブランコから降りると彼に向かって乱暴な物言いで言ってみた。

そんな風に言ったけど、本当はわかっていた。

自分の漕ぎ方が悪くて上手く勢いがつかないことは。

でも、私はお金持ちのお嬢様で英才教育を小さい時から受けてきたような人間だから、庶民に出来て私に出来ないなんて認めたくなかった。

「なみちゃん、僕が背中を押してあげるからブランコに乗って」

彼は私が出来ないことなど疑うことも責めるようなこともなく笑顔でそう言ってきた。

コイツ、なかなか良い奴かもしれない。

「なみちゃん、押すよぉ」

「どうぞ」

彼が私の背中を押すたびに、ブランコに勢いがついて高く舞い上がった。

庶民の遊具にしてはなかなか面白いじゃない。

「キャー」

私は気付くと、楽しさのあまり叫んでいた。

「おもしろいでしょ」

彼は私の背中を押しながら大声でそう言ってきた。

「別に〜〜キャーキャー」

そのあとも私は楽しくて楽しくて叫びまくっていた。

しばらくブランコに乗っていると、彼が違うので遊ぼうと言ってきたけど私はこれがいいと言ってやめなかった。

そんな私に彼は最後までブランコに付き合ってくれた。