また、私には専属の執事がいた。

執事と聞くと白髪交じりのおじいちゃんを想像する人が多いと思うけどそうではない。

私の執事は年齢は32歳、男性、独身。

名前は柊木(ひいらぎ)。

私が幼稚園生になった時に私の執事になった人間だ。

だから私のそばにきて11年になる。

初めて柊木に会ったのは彼が21歳の時。

素性は不明。

何で執事になったのかは謎。

サラサラのショートヘアに女性にモテそうな甘いマスク。

お屋敷の男性の中では1番カッコ良かったと思う。

まぁ、格好良いとか悪いとか年齢が若いとかどうとかは、どうでも良かった。

私が必要としていたのは、いかに私の要望に応えてくれるかどうかだ。

私の言うことが絶対で、絶対に逆らわない人間なら誰でも良かった。

だから私が首にした執事は何十人といた。

そんな私の要求を完璧にこなしたのが柊木だった。

柊木は私の言うことは何でも聞いてくれる。

私が言わなくても必要としているものは感じ取って用意してくれる。

それに執事には必要のないことなのだが、私の気持を誰よりもわかってくれる。

私が思っていることを察してくれる。

柊木は私にとって必要不可欠な人間になった。

今では柊木がいてくれないと本当に困る。

こんな大金持ちのお嬢様で偏差値も70以上の私が、わざわざこんな高校に入学したのには理由があった。

忘れられない人がいたから。

小学生の時に出会ったあの人が忘れられなくて、あの人が受験をしたこの高校に入った。

彼の名前は西島くん。

今は違うけど。

彼は親の仕事の関係で桜木町に小学3年まで住んでいた。

私は私の住む桜木町で彼と出会った。

白川奈未小学2年生――

今日はお婿さん候補の1人と私のお屋敷で会うことになっていた。

この日は朝から嫌で嫌で仕方なくて、朝食を食べたあと親に無断で家を抜け出した。

もちろん柊木も一緒だった。

家を抜け出した私に柊木は何も聞いてはこなかった。

私を1番近くで見てきたから私の気持がわかっていたに違いない。