私の名前は白川奈未。

F高校の1年生。

親の仕事の関係上、小学2年の途中から中学生までは海外で暮らしていた。

私の家は世間一般で言う大金持ち。

父は日本の企業でも3本の指に入るような大企業の会長をしている。

白川家の総資産は何千億と言われている。

そんな家庭に生まれた私は幼少の頃から沢山の習い事や英才教育を受けてきた。

数人の家庭教師を雇い、徹底したワンツーマンの勉強を毎日何時間もさせられた。

だから中学1年の時には偏差値は軽く70を超えていたし、言語も5カ国語を話せるようになっていた。

習っていたピアノではコンクールにおいて最優秀賞を数年に渡って獲得していた。

そんな私を両親は本当に大切に育ててくれた。

私にはお金を余すことなく使ってくれた。

身につける物は最高級品ばかりを買ってもらった。

欲しい物は何でも買ってもらった。

行きたい所へは全て連れて行ってもらった。

そんな何不自由ない生活を送っていたけど、多少なりとも不満はあった。

何でも手に入れてきた代償に私は親の言いつけには逆らえなかった。

父の開催するパーティーにはドレスを着て出席しなければならなかったし、父が招待されたイベントにはついて行かなくてはならなかった。

1番嫌だったのは、将来のお婿さん候補たちと2人きりで会って出かけなくてはならなかった。

別に親が決めた相手と結婚するのは構わないけど、お婿さん候補が必死で私に取り入ろうとしてきたり、キザな言葉で私を口説き落とそうとしたり、おべっかを使ってくるのにはうんざりしていた。

みんな金持ちのお坊っちゃんでいい服を着て高級品を身にまとい、見かけだけは大人顔向けの紳士を演じているけど私は素敵だと思ったことは1度もなかったし、まして好きになることなど断じてなかった。