それからママの運転でパパのマンションまで車で乗せて行ってもらった。

車を降りるとマンションの入口から制服姿の男子高生が出て行った。

あれって…

三枝先輩?な訳ないか。

背格好は似ていたけど、こんなところにいるはずないよね。

それからパパの家の前まで来ると、もらった鍵で扉を開けて中に入って行った。

入って直ぐにパパの部屋の良い匂いを感じた。

やっぱりこの匂い…

ママは買い物に行くと言って出かけたけど、ここに来ていたんだ。

パパの様子が心配で、わざわざ見に来ていたんだ。

きっとそれは今日に限ったことではなく、前々からそうだったに違いない。

私がパパと会えなかった9年間の間にも、パパとママは私に内緒で会ってた。

私の知らないところで連絡を取り合い、ずっと繋がっていたんだ。

だったら何で2人は離婚なんかした訳?

離婚した理由って何?

私に寂しい思いまでさせて決断した離婚って何?

離婚しても会ってるなんて変でしょ。

だったら離婚しなければ良かったじゃん。

離婚しないで一緒に暮らして好きなだけ一緒にいればいいじゃん。

2人はいいよ。

お互いに決めたことなんだから。

でも私には何も決められない。

何の選択肢もなかった。

パパとママのどちらについてくなんて聞かれもしなかった。

子供なんだから大人が決めたことに従ってればいいと思ってるの?

いい加減にしてよ!

私にだって選ぶ権利はある。

パパとママのどちらにするか…。

私のことはどうでもいいの?

私のことなんて何も考えてないの?

考えてたら簡単に離婚なんか出来ないでしょ。

何も考えてない。

考えてくれてない。

結局私はお荷物だったんでしょ。

どっちが私を引き取って面倒を見るか揉めたんでしょ。

ふざけないで。

ふざけないでよ。

私は…私は…どちらかとかじゃなくて、パパとママの両方とずっと一緒にいたかったの。

それだけで良かったの。

それってそんなにも贅沢な考えなの?

私みたいなのが望んではいけないことなの?

そんなことを考えていたら涙が溢れてきた。

拭っても拭っても溢れてきた。

悔しくて悲しくて、玄関で一人寂しく地団駄を踏んでいた。

それから真っ暗だった部屋の電気をつけてキッチンとリビングの中に入ったけどパパはいなかった。

玄関にパパの靴は置いてあったので、帰って来てるのは間違いないんだけどな…。

やっぱりインフルに感染して高熱でうなされてるのかもしれない。

そしてパパの寝室のドアを開けて入って行くと苦しそうに「う〜う〜」唸っているパパの姿があった。

部屋の電気をつけてパパに近づくと、額に冷えピタシートを貼り頭の下には水枕が置かれていた。

ママが用意してくれたものに違いない。

それにしても熱のせいなのかパパはヒドくうなされていた。