店長は「ゴホゴホ」と何度も咳をして苦しそうだった。

私はゆっくりと歩を進めて店長のもとに歩み寄った。

店長の顔は真っ赤でかなりの高熱なのがわかったので、コンビニで買った額に貼る熱冷まシートをおでこに貼ってあげた。

店長の顔をこんなに間近で見るのは初めてだった。

なかなかカッコいいな。

パパには敵わないけど中々の男前だ。

店長を見ていて気付いたけど、私って同年代の男子よりも、それなりに歳が離れた脂が乗った男性の方が魅力を感じるし、胸がキュンとする。

私ってやっぱり変なのかな?

中年男性を好きな女子高生がいたら話をしてみたいものだ。

そう言えば店長は女性のスタッフやお客さんからも結構人気があった。

店長目当てで食べに来る常連のお客も沢山いる。

店長は自分がモテていることなど、たぶんわかってないだろうし気にも留めていないだろう。

真面目一筋で鈍感な男って厄介だな。

しばらくの間、ベッドの横に座って店長の寝顔を眺めていた。

不思議とずっと見ていられた。

店長を見ていたら変な感覚を覚えた。

何だろうこの感情?

変な感じ…

好きとはちょっと違う感情…

明らかにパパに抱いている感情とは違うこの気持…

何て表現していいかわからないけど、あえて言うなら母性に近い感情…

だとするならば、私はこの人に母性を抱いている?

心当たりはある。

前々からこの人には変な感情が働いていた。

守ってあげたい…

助けてあげたい…

ほっとけない…

ギュッとしたい…

母親にもなったことのない高校生の私が言うのも何だけど、生まれながらにして持った女性特有の母性は私の中に芽生えていたのかもしれない。

それから寝室を出ると、途中のコンビニで買った飲み物とか栄養ドリンク、カロリーメイトの類の食べ物を片付けることにした。

キッチンに行って冷蔵庫を開けると作り置きした料理がタッパーの中に入れられて所狭しと並べられていた。

パパの家の冷蔵庫にはこんな物はなかった。

パパはどちらかと言うと外食派で家で料理をすることも食べることも殆んどない。

さすがファミレスの店長をやっているだけのことはあって、料理も得意分野の1つなのだろう。

とりあえず飲み物は冷蔵庫の中に入れ、その他の物もわかるようにまとめて置いといた。

あとは店長が起きた時に驚かないようにメモ書きでも残して帰ることにしよう。

そしてメモ用紙とペンを探しにリビングに入って行くと、写真立てが棚の上に置いてあって嫌でも目に入ってきた。

あまり見ないようにしてたけど好奇心のほうが強く働いてしまい、ついつい見てしまった。

遠くからでも男性2人に女性1人が写っているのはわかった。

もしかして店長の彼女?

ウキウキしながら写真立ての近くまで行って手を伸ばした。

えっ…

どういうこと?

何で?

頭の中がクエスチョンマークでイッパイになった。

意味がわからない…。