「ママも大変だったんだ」

「でも、周りには助けてくれる人がいた。だから吃音症という障がいを持っていても幸せだったと思う」

ママが幸せになれたのはパパの存在が大きかったんだと思う。

パパと高校で出逢ったことでママの人生は花開くものとなったに違いない。

それなのに、どうして2人は離婚なんてしたの?

ずっと一緒にいるって約束して結婚したんじゃないの?

私が生まれて幸せな家族だったはずなのに何で離婚したの?

どうして私を片親の家庭にしてしまったの?

どうして私はパパと離れて暮らさなきゃいけないの?

どうして?

どうしてなの?

そんな言葉ばかりが脳内をグルグルと駆け巡っていた。

「今は幸せじゃない?」

「そんなことない。今も幸せ。香澄と一緒にいられて幸せよ」

ママはキッチンの椅子に座る私の背後に立つと、私を抱きしめてそう言った。

「うん、私も幸せ」

「パパと一緒に暮らせなくさせちゃって本当にごめんね」

「うぅん」

ママからパパの話題が出るのは初めてだったかもしれない。

昨日の夜私が見たママとパパは現実のことだったのだろうか?

それとも熱でうなされていた私の悪夢だったのだろうか?

もし現実に起きていたことなら、ママとパパは今でも親交を保っている。

私の知らないところで2人は連絡を取り合っている。

そうとしか考えられない。

朝食を終えたあと、ママと一緒にかかりつけの病院に行って、インフルとコロナの検査をした。

結果はインフルエンザのA型に感染していた。

病院の先生からはあと4日間は学校に行かないように言われた。

そして病院からタミフルと解熱剤をもらった。

帰り道、牛丼屋に寄ってテイクアウトでチーズ牛丼を買ってもらった。

熱はあっても食欲は落ちなかった。

やっぱり若さって素晴らしいもので、病気でも食欲には敵わないと実感した。

病院から帰ってから、牛丼とママが作った味噌汁を食べた。

ママも美味しそうに食べていたけど、心配なこともあった。

私のインフルがママに感染っていないかどうかが…。

それに昨日一緒にいたパパにも感染ってしまっていないか不安でイッパイだった。

食事を終えたあと、パパにメールを送った。

《香澄はインフルだったよ。パパに感染っていないか心配…》

《今のところ大丈夫だよ。もし感染してても香澄のせいじゃないから》

《でも、私には責任がある。パパがもし感染してたら看病しに行くから安心して》

《その時はよろしく》

パパは今のところ感染っていなかった。

でも安心は出来ない。

感染から発症までは2〜3日と言われているから、まだ油断できない。

ちなみに私はどこで感染したのだろうか?

学校?

もしくはバイト先?

どこかは断定できないけど、私が発症してから接触した人は多数いる。