「駅まで送りますよ」

僕がそう言うとコナンくんは「いいですよ」と言わんばかりに顔の前で手をブンブンと振っていた。

「ちょっと待って」

僕はリュックの中から黒い帽子とサングラスとマスクを取り出して、それらを身につけた。

「一応これでも芸能人なんで。変装くらいはしとかないとね」

芸能人と言っても駆け出しの若手だし、ファンの方が何百人といるわけではないけど、用心にこしたことはないと思った。

それにコナンくんは性別はわからないけど、2人切りでいるところを雑誌などに変なスキャンダル記事が載せられないとも限らないし、そうなると事務所の方にも迷惑がかかるし、コナンくんの身にだって何があるかわからない。

まあ、そんなことはあり得ないけど。

とりあえずは。


「さあ、行きましょう」

僕はそう言うと、コナンくんの手を握って歩き始めた。

コナンくんの手は小さく、緊張のせいかビッショリと汗ばんでいた。

夏の暑さのせいもあるのだけど。

それとなく横を向いてみると、コナンくんの首筋に汗が伝っているのが目に入ってきた。

あまりの色っぽさにドキッとしてしまった。

つばを飲んだ。

僕の中でコナンくんは女の子であるという疑惑が確信に変わっていた。

僕がその姿に見とれていると、その視線に気付いたコナンくんは首をかしげて不思議そうにしていた。

「喉乾きません?」

僕のその言葉にコナンくんは戸惑いながら小さく頷いていた。

「そこのコンビニで飲み物でも買いましょう」

そして僕は戸惑いを隠せないコナンくんを連れてコンビニに入った。