「彰、最後の問題わかったか?」

「なっ‥何となく」

「マジかよっ。こんなことなら彰に勉強を教わっとくんだった」

「はははっ」

「櫻井さんは、どうだった?」

「うっ…う……ん」

「解けたのかよっ」

良かった。

ちゃんと解けたんだね。

やった甲斐があるってもんだ。

それから2人に気付かれないように彼女にメールを送った。

【数学のテストどうでした?】

僕がメールを送ると、隣の席の彼女は携帯電話をこっそり見たあと操作をし始めた。

そしてリアルタイムでメールが送られてきた。

こんなに近くにいるのにメールでやり取りしている人間が世界中でどれくらいいるのだろう?

きっとそんなにいないだろうな。

何だか特別な関係のように思えて嬉しくなった。

【Nさんが教えてくれた問題が出ましたね。ビックリしました。何とか解けましたよ。ありがとうございます】

【良かったです。僕も解けました】

彼女はNが解けていると確信しているようで聞いてこないので、念のため教えておいた。

【✌】

彼女はVサインの絵文字を送ってくれた。

それだけのことなのに、妙に彼女がかわいく感じられた。


数日後、数学のテストが返された。

僕は100点だった。

彼女ももちろん100点だった。

横目でチラッと見たら彼女の点数が見えてしまった。

ごめんなさい。

「みんな、今回の問題は結構難しかったと思う。最後の問題なんかは大学入試で出題される問題と同じものを出してみた」

「先生、そんな問題解ける訳ないじゃん」

「そうだそうだ」

「解けたヤツなんていないんでしょう?」

教室のあちこちから非難の声が上がっていた。

「そんなことないぞ。このクラスでも解けた者は2人いるぞ。この2人はともに100点だった」

「えぇぇ〜マジかよ」

「誰だよそいつ」

「先生、誰か教えてよ」

そんな声が聞こえてきたので、僕は身を潜めて小さくなった。