優斗はうつむいていた。
「くうっそお、バカ力めえー‼︎」
「静かに」
 授業中にも、愚痴……?
 先生にも注意されてる。
 うん、先生が問題児呼びするのも納得。
「あの、先生、咲口優斗さん、生徒指導の先生に指導させてもらってください」
「ああ、優等生」
 先生は電話をかけ、授業を続行させた。
 そして、生徒指導の先生がくると、優斗を外へつまみ出した。
 パ、パワフルっ……。
「絵梨花、裏切ったか⁉︎」
「ううん」
「黙れ問題児。静かにしてろ」
 連れてかれた優斗に手を振る。
「授業を続ける」
 戻ってきた先生はやけにご機嫌で、少し怖くなった。


耳を塞ぎたくなるほどの大声で愚痴る優斗を、春は愛しげに見た。
「恋じゃないけど、咲口くんカッコいい」
「口癖はバカ力めと、くそお、だよ?」
「そこがカッコいいの!」
 ファンの視線を受ける優斗は視線を逸らした。
 春はわらったあと、私にこそっと耳打ちしてきた。
「だから、付き合っちゃえば?」
「えっ、えええ⁉︎」
 私は焦って変な叫びを言う。
 下校中の生徒が私を睨んだ。
「うるせえ」
 優斗からも言われ、穴があったら深く埋まりたいと思った。
「わ、絵梨花、声のトーン下げて」
 春も……。
「つつつ、付き合うなんてっ、本気で好きな人とがいいよ!」
「咲口くんの気持ちは?絵梨花はそうかもだけど、咲口くんは?わかんないよ?」
 いたずらっぽく耳打ちされる。
「聞いて教えてくれると思う?優斗だよ?」
「秘密教えてっ、て、可愛くお願いすれば教えてくれるかもしれないよ?何せ、咲口くんは、絵梨花のこと……」
「おい、何言いそうになってんだ」
 可愛く言いかけた春の言葉をさえぎった。
 そ、それは、春の後ろの優斗がやったっぽい。
「きゃあああ、咲口くん⁉︎」
 好きな人の近さに、叫んだ春。
「何を言いそうに?」
「えーっと、甘い恋物語」
 ……あ、甘い?
「何で優斗おこってんの?」
「咲口くんのラブストーリーだから照れてるの。可愛い!」
 再びファンの視線……あ、優斗逃げちゃった。
「ば、ばいばい優斗……」