「くそおお、スーパーバカ力(ぢから)めえー‼︎」
 あの先生のあだ名は、バカ力らしい。私は違うけど。
「せ、先生なんだからっ」
「絵梨花はいいよなあ、バカ力から優等生って呼ばれてるもんな。俺は問題児呼びだぞ?」
 私がどれだけなだめても、優斗は愚痴を辞めない。私を屋上に連れてきたくせに。
 愚痴まみれの男子だ。
 屋上で、そびえる家にむかって「バッカヤロー」って叫ぶ優斗に、私は軽く返事をする。
 ほとんど私達はここにいる。
 私と優斗と春と戸口元くん。
 元くんは頭の良さは平均でとっても元気だ。
 私は、元くんは春のことを気になっていると思っている。
 2人には今日用事があると断られたけど。
 私は図書室へむかった。
 閉まっていた戸を開いた。
「なっ、中村さん」
「水曜日は開いてるの覚えてたんで……」
「やっぱり、記憶力良いんですね」
「いえ違います」
 驚く先生の言葉を否定し、本を読み進めた。
「わっ、うわあっ」
「えっ」
 誰かの声につられて、私は集中力が切れた。
「ゆっ、優斗⁉︎」
 スポーツマンの優斗が戸のところでしゃがんでいた。
「いて、頭打った」
 先生に診てもらうと、異常はなかった。
 安心していると、優斗が呟く。
「そんなに安心?」
「うん。だって友達でしょう?」
 心配しない人っているかな?
「友達……まあ、今はそれでいい」
……「今」って……?
「ふふ、仲良しこよしさん……」
 意味のわからない言葉を言いながら先生は笑った。
 予鈴が鳴り、優斗の手を握って引きずった
「いて、もっとやさしくしろお!」
「してる、わがまま優斗」
「は?俺はわがままじゃねー‼︎」
 子どもっぽい返し……。
「え?この前は『俺わがままだ』って言ってたじゃん!」
 残念、最初から君の逃げ場はないよ。
「げっ……くそ」
「げっ、じゃないの‼︎もうっ」
 自分の言葉には、責任を持ってよ、いい加減。
「は、話せ、絵梨花!」
「顔赤いでしょ。風邪の人が歩くと不安定になるじゃん」
 優斗が抵抗してきて、私は耐えた。
 でも力負けして、手を振り払われた。
 走る優斗を、廊下は走っちゃダメだから歩いて追いかけた。
「待って、優斗」
 ゆ、優斗の前に先生がっ。
 優斗は後ろをむいていて気付いてない!
「絵梨花ここまで来い!」
 優斗が先生に激突する。
 たちこもる少し薄い煙。
「は、離せバカ力‼︎」
「バカ力は、お前だ‼︎」
 先生、ごもっとも……。
 煙が薄まると、先生に動きを封じられた優斗がいた。
「優等生、何か言ってやれ」
「は、はい。優斗、不真面目!呆れてますっ」
 心をこめて言う。
「効果てきめんだ」
 あの叫びのどこが……?
 優斗は、先生に連れてかれて行った。