今の蒼くんの言葉……ホントなの?
蒼くんが私のことを?
吉良先輩は、バッ! と蒼くんから離れて、
「おぉ、コワ。ボッコボコにされるのはゴメンだから、今日のところは退散しとくわ。顔なんか殴られたらファンが減っちゃうし?」
と、蒼くんににらみをきかせて去って行った。
蒼くんは、小さなため息をついて。
「こりてねぇな、あいつ。まぁ、何度来たって返り討ちにしてやるけど」
「蒼くん、蒼くん……!」
吉良先輩から解放された安堵で、私は、またまた涙があふれてきた。
蒼くんが私にハンカチを差し出す。
「もう泣くな。オレ、小さな頃からずっと舞衣花に約束してただろ? 困ったことがあったら、いつでもオレを呼べよ。すぐに飛んでいくからって」
優しい蒼くんの言葉が、まるであたたかいミルクみたいに心に染みわたる。
「でも、どうして気づいたの? ここから、蒼くんが勉強してる学習室まで遠いのに」
すると、蒼くんはいつになく照れたように顔を赤くして。
「実は部活が終わるの下駄箱のところで待ってたんだ。そしたら、上の階から舞衣花の叫び声が聞こえたから、それで――」
「あたしのこと、待ってた?」
なにか、用事でもあったのかな?
蒼くんは通学バッグから、きれいなラッピングペーパーに包まれた小さな箱を取り出すと私の前に差し出した。
「これを舞衣花に渡したくって」
「私に?」
なんだろう?
ドキドキしながら箱を開けると、中から出てきたのはかわいらしい花のイラストがついた小物入れ。
さらに、その小物入れを開けてみると。
「わぁ……」
フタを開けたとたん、オルゴールの音色が流れ出した。
これ、私が文化祭で歌おうとしてる大好きな曲。
そして、小物入れの中にはピンクの小さなストーンがついた銀の指輪が。
この指輪、私のために?
「だ、だけど。こないだバーベキューのとき、おじさんたちから私とのこと冷やかされたとき、蒼くん、すごくこわい顔してたよね」
あのときの蒼くんと、私のことを好きだって言ってくれた蒼くん。
いったいどっちが本当の蒼くんなの?
「あぁ。だって、あんな言いかたされちゃ、さすがに頭にくるだろ」
頭にくる?
「オレが舞衣花のそばにいたいのは、お前といるといつも幸せな気持ちになるからだ。いっしょに話したり、笑い合ったりする時間。それがオレにとって何よりもかけがえのないものなんだよ。家がとなり同士だから、将来独りでさびしくなるからなんていうくだらない理由じゃない。舞衣花だって、そんな都合のいいコマみたいに扱われるのは心外だろ?」
蒼くん……。
そっか。あのとき怒ってたのは、私をお嫁さんにするのを嫌がってたんじゃなくて、私のためを思ってのことだったんだ。
蒼くんは、顔を赤くしたまま宙を仰いで。
「だけど、いつまでも幼なじみって関係に甘えたままなのもよくないなって思って。どうしたらうまく自分の気持ちを相手に伝えることができるか、ってクラスの女の子に相談してたんだ。そしたら、指輪プレゼントして告白したらいいじゃん!って激推しされて――」
じゃあ、以前蒼くんがいっしょにいた女の子は、彼女じゃなくて相談相手!?
「なぁ~んだ~。私ってば、かんちがいばっかり……」
ひとりで勝手に決めつけて、勝手にメソメソしてたんだ。バカみたい。
蒼くんがニコッとほほえむ。
私が昔から知ってる、優しい笑顔。
「自分の気持ちを伝えるまでに時間がかかっちまったけど、これからもオレのそばにいてくれるか、舞衣花?」
「うん、私も蒼くんのことが大好き!」
もう涙はふき飛んだ。
今、私にあふれているのは、希望と幸せでいっぱいの、とびっきりの笑顔。
蒼くんが私のことを?
吉良先輩は、バッ! と蒼くんから離れて、
「おぉ、コワ。ボッコボコにされるのはゴメンだから、今日のところは退散しとくわ。顔なんか殴られたらファンが減っちゃうし?」
と、蒼くんににらみをきかせて去って行った。
蒼くんは、小さなため息をついて。
「こりてねぇな、あいつ。まぁ、何度来たって返り討ちにしてやるけど」
「蒼くん、蒼くん……!」
吉良先輩から解放された安堵で、私は、またまた涙があふれてきた。
蒼くんが私にハンカチを差し出す。
「もう泣くな。オレ、小さな頃からずっと舞衣花に約束してただろ? 困ったことがあったら、いつでもオレを呼べよ。すぐに飛んでいくからって」
優しい蒼くんの言葉が、まるであたたかいミルクみたいに心に染みわたる。
「でも、どうして気づいたの? ここから、蒼くんが勉強してる学習室まで遠いのに」
すると、蒼くんはいつになく照れたように顔を赤くして。
「実は部活が終わるの下駄箱のところで待ってたんだ。そしたら、上の階から舞衣花の叫び声が聞こえたから、それで――」
「あたしのこと、待ってた?」
なにか、用事でもあったのかな?
蒼くんは通学バッグから、きれいなラッピングペーパーに包まれた小さな箱を取り出すと私の前に差し出した。
「これを舞衣花に渡したくって」
「私に?」
なんだろう?
ドキドキしながら箱を開けると、中から出てきたのはかわいらしい花のイラストがついた小物入れ。
さらに、その小物入れを開けてみると。
「わぁ……」
フタを開けたとたん、オルゴールの音色が流れ出した。
これ、私が文化祭で歌おうとしてる大好きな曲。
そして、小物入れの中にはピンクの小さなストーンがついた銀の指輪が。
この指輪、私のために?
「だ、だけど。こないだバーベキューのとき、おじさんたちから私とのこと冷やかされたとき、蒼くん、すごくこわい顔してたよね」
あのときの蒼くんと、私のことを好きだって言ってくれた蒼くん。
いったいどっちが本当の蒼くんなの?
「あぁ。だって、あんな言いかたされちゃ、さすがに頭にくるだろ」
頭にくる?
「オレが舞衣花のそばにいたいのは、お前といるといつも幸せな気持ちになるからだ。いっしょに話したり、笑い合ったりする時間。それがオレにとって何よりもかけがえのないものなんだよ。家がとなり同士だから、将来独りでさびしくなるからなんていうくだらない理由じゃない。舞衣花だって、そんな都合のいいコマみたいに扱われるのは心外だろ?」
蒼くん……。
そっか。あのとき怒ってたのは、私をお嫁さんにするのを嫌がってたんじゃなくて、私のためを思ってのことだったんだ。
蒼くんは、顔を赤くしたまま宙を仰いで。
「だけど、いつまでも幼なじみって関係に甘えたままなのもよくないなって思って。どうしたらうまく自分の気持ちを相手に伝えることができるか、ってクラスの女の子に相談してたんだ。そしたら、指輪プレゼントして告白したらいいじゃん!って激推しされて――」
じゃあ、以前蒼くんがいっしょにいた女の子は、彼女じゃなくて相談相手!?
「なぁ~んだ~。私ってば、かんちがいばっかり……」
ひとりで勝手に決めつけて、勝手にメソメソしてたんだ。バカみたい。
蒼くんがニコッとほほえむ。
私が昔から知ってる、優しい笑顔。
「自分の気持ちを伝えるまでに時間がかかっちまったけど、これからもオレのそばにいてくれるか、舞衣花?」
「うん、私も蒼くんのことが大好き!」
もう涙はふき飛んだ。
今、私にあふれているのは、希望と幸せでいっぱいの、とびっきりの笑顔。