そのうち左上位が、だんだんこちらの方へ近づいてきた。
 チン!ドン!チン!ドン!
「コぉ~のカクリツ!コぉ~のカクリツ!」
「わぁぁぁぁ!!」
 左上位が耳元でがなり立てるので、二人は圧倒されてしまった。
「うるせぇなぁお前たち!一体何者なんだ!!左翼か?」
 青年の一人が聞くと連中は、ふんぞり返って答えた。
「オイラたち、左翼じゃないモン!”左上位”だモ~ン!!」
「ひ・・・・左上位・・・・?」
 青年たちは聞き慣れない言葉にキョトンとしていた。
「オイラたちはミンシュシュギのためにこうやって活動している。オマエたちも左上位に入会してはどうかな?」
 蘆屋が勧めた。
「お前たちは、国家がどうあるべきか考えずに、自分がどうあるべきか考える事が民主主義だと思ってるのか!?その発想はどこから来てるんだ?」青年の一人が聞いた。
「陰陽説に決まってるじゃないか。陽と陰は相反する存在だから、相反するスタンスを取れ、っていうのが陰陽説の教えだ!国家が陰で、国民が陽だ!よ~く覚えとけ!!」蘆屋が生意気そうな口調で二人の青年に言った。
「お前たちアホか!国家がどうあるべきか考えなければ、民主主義になるわけないだろ!」
 青年らは言い返した。すると蘆屋は突然、青年らを怖い顔で睨みつけた。
「オマエら・・・・テーコクシュギシャか!?戦前は国家がどうあるべきか考えたから侵略戦争になったんだ・・・・オイラたちの活動にケチつけやがって・・・・オマエらのような奴がいるから日本にミンシュシュギが根付かないんだ・・・・」
 左上位は青年らを睨みつけた。
「それはこっちの台詞だ!!こんなバカほっといて、いこうぜ!!」
 青年たちはその場をあとにした。
 青年たちに、自分たちの論理が理解されなかった事に、左上位は悔しさで肩をいからせていた。そして左上位が日本社会に受け入れられない原因は、日本人に市民意識がないからなどと、責任転嫁しようとしていた。