『君、愛されたいんでしょ?なら無茶苦茶に愛してあげるよ。……偽りで良ければね』
最初、公園で会った時。香月雅は言った。〝偽りで良ければ〟なんて、いかにもクズな男がいいそうなことだって思った。
でも、違った。愛せないんだ。心から誰かを愛してはいけないと、自分自身でブレーキをかけているから。
その意志は固いって、日ごろの香月雅を見て居ればわかる。あれだけのクズになるためには、それ相応の覚悟がないと出来ないことだ。
きっと香月雅は、もう一生、本気の恋をしない――
「やっぱり、羨ましいなぁ」
もう一生、本気の恋をしない香月雅から、本気で愛された元カノたち。ノートに書かれたひとたちは、それはそれは愛され大事にされたんだろう。どんなことがあっても隣にいてくれ、励ましてくれたんだろう。
対して私は、偽りの香月雅しか知らない。彼から受け取るのも、偽りの愛。
元カノたちと自分の差に、しばらく思考が停止する。ショック……と言えばいいのか。