「そうそう。〝気持ち悪!〟が捨て台詞だったよ。この部屋に一人残されて、何をする気も湧かなくて。でも、このままの俺じゃダメだって思ってさ。だから、一途な自分を捨てることにした」


一途な自分を捨てる――香月雅は簡単に言ったけど、その瞳は、少しだけ切なさを含んでいる。


「俺が恋愛に本気になると、どうしてもこういうノートを作って重くなるから。だから俺は、本気で恋愛をしちゃいけないんだよ。自分だけじゃなくて、相手も傷つくしね。だったら遊び人として過ごしていた方がいい。誰も傷つけなくて済む」

「そんな……」

「今つけてるピアスはね、フラれた彼女にあげる予定だった物。今となっては、自分への戒めだよ。このピアスがある限り〝恋愛に本気にならない〟って、固い意志を持ち続けて居られる」


両耳につけたら、それはそれで重いでしょ?
だから片方だけ


何事もないように、香月雅は笑った。だけど私は、胸の中がぐちゃぐちゃしていて……同時に、むしゃくしゃしていた。