「お邪魔しま~す……わぁ、何もない」
一応ノックして入る。すると中は想像通りというか。必要な家具以外は何も置かれていない、いたってシンプルな部屋だった。
「……しまった!なに普通に部屋に入ってるの、私はッ」
無意識にベッドへと目をやる。ヴィンテージ風のパイプベッド。黒いシーツに、枕が一つ、クッションが一つ……って、やめやめ。何を確認してるの、私は!
パンパン頬を叩いたと同時に、香月雅が飲み物を持って入って来た。有名ショップの抹茶味のドリンク。コンビニ限定で、高くて買えないやつ!
「……え、まさか今日、私がここに来るって知って?」
「さすがに違うよ、妹も好きなんだよ、この抹茶」
(服も借りた上に、好物の飲み物まで奪われたとあっては……妹さん、私にキレるじゃない?)
一抹の不安が芽生えたので、飲むのは遠慮しておいた。でも香月雅は、ストローをプスッとさす。