香月雅の〝その恰好〟というのは、香月雅の半袖Tシャツに、女性用の短パン……なぜ女性用があるんだろう。

すると香月雅が「妹のだけど入った?」と、Tシャツからギリギリ顔を出している短パンを指さした。妹いるんだ。


「貸してくれてありがとう。でも勝手に使って怒られない?」

「妹は俺推しだからね。むしろ〝自分の部屋にお兄ちゃんが入ってくれた!〟って喜ぶタイプ」

(そんなタイプは初耳だけど……)


そんな推しのお兄ちゃんが連れて来た女に、自分の服を着られて……妹さん、嫌じゃないかな。返す時、妹さんの好きなお菓子と一緒に返そう。


「あのさ、妹さんの好きなお菓子って、」

「……はぁ~、本当いい」

「は?」


私をリビングの中央に立たせて、その周りをグルグル回る香月雅。まるでハンカチ落としでも始まりそうな雰囲気なので、謹んで止まってもらう。何が「いい」んだろう。


「俺の家に仁奈がいるって、いいね。記念に写真を撮ってもいい?」

「絶対ダメ」