「だって、あの高い鼻をへし折ってやるチャンスかもしれないし」

「いやいや、言い方」


すると先生が入ってきて、授業開始。隣同士の私たちは、号令がかかるギリギリまで話をしていた。


「でも私も気になるからさ。香月くんの過去に何があったのか、探ってきてよ。あれは絶対、女関係だから」

「小夜ちゃんも気になってるじゃん」

「ただの興味本位。女性を上手くあしらうモテ男が秘密にしたがる恋なんて、それだけ本気だったって事でしょ?あの香月くんが本気になる恋はどんなものかなー?って、気になるだけ」

(香月雅が本気になる恋……)


教科書とノートを机に置きながら、小夜ちゃんは「もちろん、無理にとは言わないからさ」と付け足した。私はコクリと頷き、シャーペンを手に取る。

だけど授業が始まっても、手はロクに動かなくて。視線だけは忙しそうに、黒板と香月雅を往復した。


(香月雅の過去、か……)