「あのさ……誰も思ってないことを、さも皆が思ってるみたいに堂々とした口調で言うの止めてくれないかな」

「俺は思ってるよ?」
「私も思ってるし」

「いや、小夜ちゃんはいいの。むしろありがとう」


香月雅は私への接触が多すぎて、いつの間にか友達の小夜ちゃんと仲良くなっていた。

入学式の時、手に汗握って震えながら話しかけ、やっと友達になれた私とは大違いで。香月雅はなんともフランクに話しかけ、その結果、……短期間の内に、二人は意気投合している。

キーンコーンカーンコーン

予鈴が鳴り、騒がしい色男が去った後。


「前々から思ってたんだけどさ」


授業が始まる五分前。小夜ちゃんの視線は、香月雅を追っている。なにやら観察する視線だ。


「なんで香月くんのピアスって片方だけなの?」

「……確かに」


香月雅の右耳には、髪の毛と同じ、黒色のピアスがはまっている。だけど、右耳だけ。確かに不自然。