「前言撤回……私、やっぱりあなたのことが分からない」

「じゃあ仲間だ。俺も仁奈のことが分からないからさ。これから二人で、ゆっくり知り合っていこうね」

(……思えば)


私は、彼の何を知っていた気になっていたんだろう。

いきなりキスするわ、告白の返事を催促するわ、恋を教えるなんて言うわ……。彼の人格は、分からないことだらけだというのに。


(香月雅って、接触すればするほど分からない。混乱させられる。ただの同級生に、ここまで翻弄されるなんて)


きっと彼は、危険な恋の入り口。だけど残念なことに、もう私は片足くらい突っ込んじゃってる。【香月雅と心の距離がジワジワ近くなっている】その事実に、期待してる自分がいる。

……何を期待してるんだろう。相手はドのつくクズ男だというのに。