「待って」

「ん?」

「なんで私が黒ネコなの?」

「……そういう所がド天然っていうんだよ」


香月雅の目から、スゥと光がなくなる。いや、分かってるよ。ちゃんとしたツッコミどころは、私も分かってる。

なにも目立つカバンにつけなくてもイイじゃん!――きっと、これが正解のツッコミ。

でも、この黒いネコ……なんか顔がツンケンしてるんだもん。これが私なんて、なんか嫌だ。対して白ネコは、目が大きくてきゅるんってしてるし。


「自分からかわいい方を選ぶなんて……あざとい」

「だから違うって。黒ネコは俺。
それを、仁奈に、あげました」

「……なんで?」

「だーかーら」


はぁ、とため息をついて私を見る香月雅。呆れた声が、突き出た喉仏から振動した。


「その黒ネコを俺だと思ってよ、って話。寂しかったり元気がなくなった時は、黒ネコ(俺)を見て笑って」

「……それ、」