「はぁ、大体さ」


いったん冷静になって、恋人つなぎした手をはがす。久しぶりに風通しが良くなった手に、冷たい風が当たる。

けど、私が香月雅を見る視線の方が、もっとひんやりしている。冷房の設定温度でいうなら、17度くらい。


「私に恋を教えるって言ったじゃん。それなのに女の人と一緒に帰ったり、昼休みにネクタイが歪むようなやましい事したりさ。この調子じゃ、全然教えてもらえそうにないよ」

「だから、いま教えてるでしょ。はいコレ」


シャランと、眼前にぶらさがったのは。さっきユーホーキャッチャーでとれたネコ……の黒い方。


「これを、こうして。はい出来た」


私のカバンにぶらさがる黒ネコを見て、香月雅は満足げに笑った。三秒後には自分のカバンを指さし「おそろい~」と、ジッパーにぶらさがる白ネコをフリフリ動かす。