「……何してるの?」
「心頭滅却って言葉しらない?自分をおさえてるんだよ。仁奈の可愛さに抗ってるの」
「へ?」
「俺が恋愛経験豊富で耐性のある男でよかったね。普通の奴なら、今ごろ仁奈はキスされまくりだよ?」
……わ、訳が分からない。
小首を傾げると、「これだからド天然は」と笑顔で舌打ちされた。
「可愛いも、ほどほどにね。下手したら襲われちゃうから――ってわけで。今後は、俺の前でだけ〝そういう言動〟をすること。それ以外は禁止」
「待って。思考が追い付かないんだけど……」
勝手すぎて意味がわからない。どうして日本イチ遊んでそうな男子に、日々慎ましく生きてる私が注意されないといけないのか。
「自分は所かまわず愛想ふりまいてるじゃん。私のことを注意する権利なんて、」
「ある。俺はチャラくてもいいけど、仁奈はダメ」
(なに、その理不尽)
その無意味な支配欲はなに?独占欲みたいなさ。でも私たち……恋人同士じゃないよね?