「仁奈、しかめっ面になった理由を聞いて良い?」

「私……手を繋ぐのは、久しぶりだから」

「だから?」

「は、恥ずかしいの!だって、この手は……男の子の手でしょ?」


〝この手〟と言った時。少しだけ、繋いだ手を上げる。でも香月雅の手が重たくて、すぐ下がっていった。

小夜ちゃんと手を繋ぐ時もある。すごく軽くて、繋ぎやすくて……。だというのに、香月雅の手は重いし、ゴツゴツしてるから繋ぎにくい。力を入れていないと、すぐ離れてしまいそうだ。


「ねぇ、もっと強く握ってよ。じゃないと離れちゃう」

「……え?」


……。
…………ん?
さっき喋ったのは私?

まさか私の声!?


(これじゃあまるで、香月雅と手を繋ぎたいと思ってるみたいじゃん!)


カッと熱くなった顔を、香月雅に見られないよう、反対側へそらす。だけどいつまで経っても、隣は静かだった。怖すぎるほどの静寂。

おそるおそる見ると――


「……あー、なるほどね。はいはい」

(目を閉じて唸ってる……?)


香月雅は精神統一をするように、「ふー」と長い息を吐いた。