「ちょ、手!」

「仁奈の手って小さいなぁ」

「そういう事じゃない!」


一般人の私が、あの香月雅と手を繋いでいる――


そんな光景を同じ高校の女子に見られたら、明日どんな噂が立つか。

今日、必死に「付き合ってない」と火消しをしたばかりなのに……。この男、人の苦労も知らず、次から次へと。


「ねぇ。仁奈ってさ、俺の前だとあまり笑わないよね」

「……そうだっけ」

「そうだよ。警戒されてるなぁって、毎回凹むもん」


香月雅への文句でいっぱいだった頭に入って来たのは、なんと私への文句。彼の顔から笑顔は消え、ブーと唇をつきだしている。男子高校生ならざる〝あざとさ〟。


「それって凹んでる顔?」

「うん。凹んでる顔」

「香月雅でも凹むことあるの?」

「俺をなんだと思ってるの。人間だよ。ほら、あったかいでしょ?」


ぎゅっ

握られた手に、力がこめられる。あったかいっていうか、熱すぎる。恋人つなぎだから、全ての指が、香月雅の指とくっついているんだもん。

うわ、密着し過ぎだよ。恥ずかしいってもんじゃない。今すぐにでも、離したい気分。

……今の私、普通?
変な顔してない?